「ブランディング」と「値上げ」は常にセットで考えなさい
売上の3大要素のうち「客単価」については、安くしたほうが売れると考えている人が多いようですが、消費者は往々にして「値段が高いモノ」に興味をひかれるものです。ルイ・ヴィトンやシャネルがもし1000円で売られていたら、ほしいと思う人はかえって減るのではないでしょうか。
2019年の改元の際には、グランドハイアット東京のレストランが10万円の「令和バーガー」を売り出して話題になりました。あれだって値段が3000円程度だったら、おそらくメディアに取り上げられることはなかったでしょう。
そこまで極端ではなくとも、市場価格よりもちょっと高めなモノにひかれる消費者は少なくありません。例えばガトーショコラで有名な「ケンズカフェ東京」は、もともと貸切専用の居酒屋でした。その居酒屋のメニューの一つとして出していたガトーショコラがおいしいと評判になったため、居酒屋という業態を捨ててガトーショコラ一本で勝負することにしたそうです。
しかし、同店が成功した最大の要因は、おいしさではなく「価格設定」にあるといえます。主力商品であるガトーショコラの値段は、当初は1本1000円くらいでしたが、今では3000円(税込)と類似商品に比べてかなり強気な設定になっています。ふつうに考えれば、短期間で値段が3倍に跳ね上がれば消費者にソッポを向かれてしまいそうですが、同店では客が離れるどころか、ますます人気が高まりました。
理由の一つは、値上げによって「贈答需要」が生まれたためです。バレンタインやホワイトデー用、あるいはちょっとした手土産として買うには、1000円では安すぎて気が引けるけれど、3000円ならそれなりに奮発した感じが出て、自分の顔が立つと考える人が多いのでしょう。
二つ目の理由は、値上げによって商品の「イメージ」が向上したためです。繰り返しになりますが、消費者が商品を買うときにもっとも重視するのは「イメージ」です。同店のガトーショコラは「3000円もするのだからおいしいに違いない」というイメージづくりに成功したからこそ、高くても大いに売れているのです。
ですから商品の価格を決めるときは、単純にモノの原価や相場だけで決めるのではなく、話題性やブランディングも意識する必要があります。特に、メーカーの型番商品ではなくオリジナル商品を扱っている方は、薄利多売だけではなくブランド化という選択肢もあることを頭に入れておいてください。