データ分析

「データと売上」自動販売機のアイトラッキングから分かる思い込みの嘘

人間の思い込みほど怖いものはない

データから学ぶ第一のメリットは、人間の勝手な「思い込み」を排除できることです。とくにここ数年、ITや通信に関する技術が発展し、これまで取れなかったデータが取れるようになったことで、人間が長いあいだ「こうすれば売れるだろう」と思い込んでいたことが、実はそうではなかったということがわかってきました。

例えば、流通業界やデザイン業界では、これまで「Zの法則」が絶対視されてきました。Zの法則とは、商品が並んだ棚やチラシを見るとき、消費者は左上→右→左下→右と「Z」の順番に視線を動かすというものです。多くの企業がこの説を信じ、商品を陳列したりチラシを作ったりするときは、最初に目が行く「左上」にもっとも売りたい商品を配置するようにしていました。

ダイドードリンコの「アイトラッキング技術」

ところが、清涼飲料メーカーの「ダイドードリンコ」がアイトラッキング(視線計測)の技術を使い、消費者が実際にどこを見ているかを調べたところ、最初に見るのは左上ではなく「下段の左端」であって、上段はそれほど見られていないというデータが取れました。このメーカーでは、それまではZの法則にのっとって左上にイチオシ商品を陳列していたのですが、データを信じて中段左に変更したところ、売上が大幅にアップしたそうです。データというのはまさしく真実を映し出す鏡なのです。

データに学ぶ第二のメリットは、売上アップに直結する「的確な施策」を打てるようになることです。これまでは、商品がなぜ売れたのか、なぜ売れなかったのかという原因は、何となく予測することしかできませんでした。だから「高いから売れないのだろう」と思い込んで、本来必要のない値引きをしてしまうなど見当違いの対策に走り、さらに業績を悪化させるというケースも多くありました。

けれども、データがあればそんな間違いは起こりません。データを分析すれば、売れた/売れなかった要因は一目瞭然ですから、最短距離で改善することができます。データがあるということは、PDCAが劇的に回しやすくなるということなのです。