世の中には「ウソデータ」がはびこっている
データは決してウソをつきませんが、世の中にはさまざまな「ウソデータ」がはびこっています。その多くは、誰かが自分の勝手な思い込みで言い出したことが、あたかもデータ的な裏付けがあるかのごとく広まってしまったものです。
その典型が「〇〇だから売れない」というものです。
「今どきの若者はお金を使わないから、高いモノは売れない」
「この色は女性向けだから、男性には売れない」
世の中には、そんな思い込みがあふれています。
けれども、何もやってみないうちから「これは売れない」と決めつけることはできないし、そもそも「〇〇だから売れない」という自己分析は99%間違っています。
モノが売れない原因は、大きく言えばたった一つしかありません。
「伝わっていない」から売れないのです。
この「伝わっていない」という状態は、さらに二種類に分けることができます。一つは、その商品自体のよさがストーリーとして伝わっていない。もう一つは、その商品の存在が伝わっていない、つまり消費者にリーチできていない状態です。
日本では、いまだに「いい商品を作れば売れる」と考えている人が多くいますが、モノがあふれる現代、何もしないのに自然とモノが売れていくなんて、そんなことはありえません。いかに優れた商品でも、それを「伝える」ための努力をしなければ絶対に売れないのです。
いい商品でも伝わっていなければ売れない
では、「伝わっていない」とはどういう状態なのか――。
渋谷のスクランブル交差点に面したカレー屋さんをイメージしてみてください。毎日、何万人もの若者が店の前を通るのに、入店するお客はほとんどいません。
店主はその原因を、世代のせいだと思い込んでいます。「ウチのカレーはおいしいのに、客が来ない。やっぱり今どきの若者は、カレーなんて地味なものは食べないんだろう」という具合です。
しかし、実はそのカレー屋さんにお客が来ない本当の原因は「看板」にありました。店頭に飾ってある看板のメニュー写真が暗く、全然おいしそうに見えない。だから人が入ってこないというだけの話だったのです。
この場合、店主が取るべき対策は、すぐに看板を付け替えることです。ところが、世代やカレーそのものに問題があると思っている店主は、余計なお金をかけて店内を若者向けに改装したり、インスタ映えを狙って突拍子もないメニューを考案したりと、真の原因に気づくまで空回りを続けることになるでしょう。
楽天市場で画像1枚でクリックが37倍売上が4倍アップしたケース
楽天市場でも、こんなことがありました。
女性ファッションのジャンルで、10万人ものユーザが見ているにも関わらず、わすか50人にしかクリックされていない広告がありました。これは、商品の存在は伝わっている(消費者にリーチできている)ものの、商品そのものの良さが伝わっていない状態です。
クリック数が少ないのは、明らかに「画像」が悪いせいでした。ファッション分野の広告では、1枚の画像にユーザが求める情報を的確に盛り込む必要があります。
このショップは、そうしたセオリーをいっさい無視して、なんだかよくわからない画像をぽんと一枚用意しているだけでした。そのことに気づいた楽天の担当者がショップに画像の差し替えをアドバイスし、ショップ側も助言を容れてそのとおりに実行したところ、それだけでクリック数は37倍になり、売上も4倍にアップしたのです。