Webの裏側

「中途半端なデータ」を持て余している会社の〝ダメ〟な特徴 元楽プロデューサーが語るデータの極意

その会社にどんな問題があり、どんな対策が求められているのかは、自社で取った「データ」が一番よく知っています。しかし、せっかくデータを取っているのに、まったく活用できていない会社もあります。

データ活用ができない3大原因

データがあっても活用できない原因は、大きく三つ考えられます。

今の時代当たり前になったデータ活用

①データよりも結局のところ「誰か」の発言を優先している

データを見れば、売れない理由は「訪問数が少ないから」であることは明らかなのに、偉い人が「いやっ、売れないのは商品が野暮ったいからだ。もっと若者にウケるパッケージに変更しよう!」と言ったりすると、それが鶴の一声になって、データよりもそちらを優先して行動指針を決めてしまうのです。これは、売上を上げる際のかなりのネックとなってしまいます。

②昔ながらの常識やセオリーに引っ張られる

「ウチの業界ではこれが普通だから」「前にこういうやり方で成功したから」「昔からずっとこうだから」など、過去の成功体験や個人的な感覚にしばられて、やり方を変えられなくなっている状態です。

③これといった目的もなくデータを取っている

データというのは本来「売上を上げるため」「トレンドを調査するため」など目的を明確にした上で取るものであって、「いつかどこかで何かの役に立つかもしれないから、とりあえず取っておこう」という意識で取ってしまうと、たいてい役に立ちません。無目的に取ったデータというのは、あとで活用しようと思ってもいまいち使いづらく、結局は誰にも共有されることなく忘れられていくのが関の山です。

こうした〝ダメ〟なパターンに陥らないためにも、まずは「データを取る目的」と「その目的に合った項目」を明確にした上でデータを取り、しっかりと活用していく必要があります。そうした努力を怠り、「なんとなく」で指針を決める会社や個人の売上成績が成長することは、今の時代はまずありません。楽天市場でも売れている店ほど意識的にデータを収集・活用しているのです。

必須のデータと、不要なデータ

では、改めてどんなデータが必要なのか、ここでまとめておきましょう。

ほとんどの会社にとって、データを取る一番の目的は「売上を上げること」でしょう。その場合、まず必要になるのは、売上を構成する3大要素「訪問数」「転換率」「客単価」のデータです。これがなければ、公式に当てはめて自社の現状を分析するという、改善に向けての第一歩を踏み出すことができません。

自社の訪問数や転換率が合格点に達しているかどうかは、同業他社のデータを入手して比較するか、あるいは過去の自社データを比較することで判断します。そのためにも、3大要素のデータは一定の期間だけではなく、営業を続ける限りずっと取り続ける必要があります。そうすると「前年にくらべて数字がいい/悪い」といった判断ができるのはもちろん、何か変化があったとき、その前後で数字がどう動いたかを確認することもできるようになります。

例えば、商品パッケージを刷新したり、サイトの画像を変更したり、新しいキャンペーンを始めたり、店頭に飾るPOPを付け変えるなどしたとき、その前後で「3大要素」がどう変化したか見てみると、施策が成功だったかどうかが目に見えてわかります。ポイントアップキャンペーンによって転換率が3%上がったとしたら、その施策にはそれだけの効果があるという成功パターンが生まれるのです。

3大要素に加え、可能であれば取っておきたいデータの筆頭が、顧客の「性別」と「年代」です。年代は、具体的に何歳ではなく「20代」「30代」といったざっくりとしたもので十分です。これらのデータは主に、自社のコアターゲットを知るために取るものです。

1日の訪問数のうち何人が新規で何人が既存の顧客だったか、その割合もできれば押さえておきたいデータです。これは今後の販売戦略にも大きく関わるところで、新規客ばかりであるならリピーターを獲得するための施策が必要だし、逆の場合は、リピーターを大事にしつつ新規客を呼び込む方法を考える必要があるからです。

流入経路を把握すべし

このほか「流入経路」、つまりその店にたどり着いた経路も調べることができるなら、調べるに越したことはありません。Webで広告を見て来た人が多いのか、テレビCMで興味を持った人が多いのか、それとも口コミや評判かなど、流入元の傾向がわかれば、訪問数を伸ばす対策に生かすことができます。

これらのデータは、人数や年数が多ければ多いほど役立つことは確かですが、母数が少ないから意味がないというわけではありません。データというのは、比較できるものが一つでもあれば分析可能な対象となります。

例えば、オープンしたばかりのリアル店舗で初日に10人分のデータが取れたとしたら、それだけでも立派なデータといえます。客は男女どちらが多いか、コア年代はどのあたりか、午前と午後で違いはあるかなど、さまざまな比較ができるからです。さらに、そのデータが2日で20人分になれば、前日に比べてどうか、2日連続で来てくれた客はいるかなど、さらに多様な角度から分析できるようになります。

なお、データの取り方は、ネットかリアルかによって異なります。売上の3大要素は、ネットなら受注履歴、リアルならレジや伝票に記載された情報を元に集計することになるでしょう。性別や年代は、ネットショップであれば会員登録時の必須項目として入力してもらい、リアル店舗の場合は、接客した店員が見た目で判断してメモなどに残します。実は、コンビニのレジでも客の性別と年代は必須入力になっていて、店員が勘で「40代女性」などと入力しています。

データ収集のために顧客にアンケートを取る場合は、あれこれ聞きたくなる気持ちを抑えて、必須項目はなるべく少なめにしてください。個人情報を根掘り葉掘り聞かれるのは不快なものだし、アンケートがあまりにも長いと、途中で面倒になって回答をやめてしまうからです。また、回答方法を選択式ではなく記述式にすると回答率がグンと下がってしまうため、極力避けるようにしましょう。

例外は、メールアドレスの記述です。

ネット通販の場合は連絡手段としてほぼ100%聞くことになりますが、リアル店舗でも、できればアンケートに手書きで記入してもらうなどして集めておきたいデータです。

顧客のメールアドレスを入手する最大の目的は、メルマガを送ることです。楽天のメルマガは「うざい」と言われることも多く、あまり評判がかんばしくないのですが、それでもメルマガの効果は絶大で、売上アップには欠かせないツールとなっています。

反対に、そこまで重要度が高くないデータは「住所」です。住んでいる地域によって消費動向が変わるかといえば、ゼロではないけれど、販売戦略に役立つほどの大きな差異はありません。通販の場合は送付先として聞く必要がありますが、リアル店舗のアンケート調査であれば記入してもらう必要性・必然性は低めなので、相手の負担にならないように項目から外したほうがいいでしょう。

まとめ

詳しくは、本の中でたっぷり解説!